一宮の歯科医が分かりやすく歯周病の原因・治療法を解説!

本記事は、歯周病治療に力を入れている一宮(千秋町)の磯村歯科医院が歯周病に関する情報をまとめた記事になります。

歯周病について詳しく知りたい」「歯周病の原因や歯周病の治療法を知りたいという方は、下記の記事を読み進めていってください。

目次

歯周病って?

歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患のことを言い、歯の周りの歯ぐき(歯肉)や、歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。

歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞し歯肉の辺縁が炎症を起こして赤くなったり、腫れたりしますが痛みはほとんどの場合ありません。

さらに進行すると膿がでたり歯が動揺してきて、最後には歯を抜かなければならなくなってしまいます。

歯肉炎や歯槽膿漏との違い

歯肉炎は、歯茎自体の炎症を指すことに対して、歯槽膿漏は、歯を支えている骨が溶けてしまい、歯がむき出してしまう病気になります。歯周病は、この歯肉炎と歯槽膿漏(しそうのうろう)の総称を指す言葉になります。

歯周病の原因について

歯周病の原因は、大きく分けると3つあります。

①細菌因子(ポケット周辺やポケット内の細菌、プラーク)※歯と歯ぐきの境界を『ポケット』と呼びます。
②環境因子(喫煙、ストレス、薬物等)
③宿主因子(患者さん自身の体質、全身疾患等)

などが関係すると考えられています。

他にも、遺伝性の病気、血液の病気(白血病等)、皮膚の病気、糖尿病や関節リウマチ、肥満などの慢性疾患により発症しやすくなります。

歯周病の原因となる「歯垢(プラーク)」は、生きた細菌の塊で、歯とほぼ同じ乳白色で水に溶けにくく、歯の表面に粘着しているため、残念ながら、うがいをするだけでは取り除くことはできません。

まずは、日頃の歯みがきの仕方から見直し、この歯垢(プラーク)を取り除くことが大切です。

歯周病の進行度合をチェック!
11個のうち、あなたは
いくつ当てはまっていますか

①歯垢や歯石がたくさんついている。
②口の中がネバネバする。
③口臭がある。
④歯と歯の間に物が挟まる。
⑤歯ぐきが赤く腫れている。
⑥歯がグラグラする。
⑦歯を磨いたら血が出る。
⑧歯がしみる。
⑨かたいものが噛めない。
⑩朝起きた時に口が臭い
⑪口が乾く

いかがでしたか?

もし、この中の1つでも当てはまっているのであれば、既に歯周病が進行している可能性があるため、お早めにケアされることをオススメします。

歯周病の重症度は「4分類」あります

歯周病は大きく分けて、4分類されます。  

1 歯周炎
歯と歯茎との境目(歯周)の溝の深さ(歯周ポケット)が3mm以内だが、その溝に虫歯の原因となる細菌が溜まり、歯茎が炎症を起こしている状態。歯磨きの際に出血しやすくなります。

2 軽度の歯周炎
歯周ポケットの深さ:4mm〜で、歯を支えている顎の骨が溶け始めた状態。歯茎が腫れて歯磨きの際に出血が見られるだけでなく、冷たい水がしみたり、口臭が出たりします。

3 中等度の歯周炎
歯周ポケットの深さ:6mm〜で、顎の骨が半分くらい溶けた状態。歯を指で押すとぐらつきます。歯茎の腫れや出血に加え、歯が浮くような感じがしたり、口臭が強くなることがあります。

4 重度の歯周炎
歯周ポケットの深さ:8mm〜で、顎の骨の3分の2以上が溶けた状態です。この時は、歯のぐらつきがひどくなります。

歯茎が下がり歯根が露出し、歯が長く見えたり、歯と歯茎の境目から膿が出て口臭がよりきつくなることがあります。この状態を放置すると、最悪の場合、歯が抜け落ちてきます。

歯槽膿漏は何歳ぐらいで発症するのか??

歯槽膿漏になるのが速い人は20代で発症し、30代でも比較的多くなってきています。この理由としては、喫煙や糖尿病などの生活習慣病だけでなく、日頃の食生活も影響していきます。

また、就寝前の歯磨きの習慣があるかないか、デンタルフロスや歯間ブラシなどの普段からの利用の有無など様々な要素によって、発症する確率が変わります。

そのため、「若いから大丈夫」だということを過信し過ぎないことが大切です。

歯周病が進行し、放置するとどうなるの?

歯ブラシを歯に軽く当てただけで歯茎から出血したり、歯茎がぶよぶよになっていきます。

また、自分でも「口が臭い」と感じるようになったり、感覚的に違和感を感じるようになります。

既にこの時の症状は、歯茎の骨が少しずつ溶けていく「歯槽膿漏」のサインになります。

さらにその状態で放置をすると、歯茎がパンパンな状態になり、出血が酷くなったり、歯の揺れが気になったり、硬いものが食べづらくなったりします。ここまで来ていたら、確実に骨が溶けていっています。

骨が溶けていくことで、歯茎の位置は少しずつ下に下がっていきます。

歯が下がって、「歯が長く見えてきている」というのは、「歯茎が痩せてきて、歯がぐらぐらしている」状態です。

その状態で、何か食べると、ある日突然、「歯が抜けてしまった」ということも出てくるかもしれません。

仮にその日に抜けた歯が1本だとしても、実は、他の歯の歯茎の状態も同じような状態になっている可能性が高いため、本来はそうなる前に受診をするようにしてください。

何故、歯周病を甘く見ない方が良いのか

実は、歯周病は「歯」の影響だけに留まりません

例えば、、、

・全身の動脈硬化の症状が出る
・狭心症や心筋梗塞などを引き起こす確率を高める
・糖尿病リスクを高める
・高齢者の誤嚥性肺炎を誘発させるキッカケになる
・認知症のリスクを高めることに繋がる
・早産や胎児の成長不足、低多重出産などの要因(妊産婦の方)
・肺がん、大腸がんを発症する確率を高めてしまう

など、様々な影響が出てきます。

「たかが口でしょ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、その口や歯の問題がここまでの影響を及ぼすことを殆どの人は理解していないかもしれません。

しかも、歯周病は「自覚症状がないまま進行することが多い」病気です。

そのため、日頃からの歯みがきは勿論のこと、定期的な検診を受診されることをオススメします。

歯周病は人に移ったり感染したりするの?

赤ちゃんから幼児の子育て世代のお母様方からよく頂く質問です。

キスをしたり同じスプーンを使ったりしない方がいいのでしょうか?

結論から申し上げると、歯周病は「人から人へ感染します

歯周病の原因は「歯周病菌、ばい菌」です。

つまり、風邪やインフルエンザなどと同じ、感染症なのです。歯周病の半分程度は、夫婦間の感染であるという研究もあり、欧米では広く知られているところです。

しかし、誤解して頂きたくないので、しっかりとお伝えしますが、一概に、歯周病菌が感染するとは言えません。

何故なら、仮に歯周病菌が口の中に入ってきても、定着して増殖(=感染)しなければ歯周病にはならないからです。

歯周病菌が感染・増殖し、バイオフィルムと呼ばれる“菌のかたまり”になると、歯周組織を破壊していきます。

そのため、歯周病菌が口に入ってきても、増殖できる環境でなければ、歯周病にならないため、必ずしも感染する訳ではない、ということはご理解ください。

歯周病菌が増殖しにくいお口の環境とは

当院では、歯周病菌が増殖しにくいお口の環境を「3つの要素」で考えています。

①生物的要素
ロイテリ菌(ヒトの母乳由来の乳酸菌)により口腔内の菌質を整え、自浄作用を働かせていきます。

②化学的要素
タンパク分解型除菌水(POIC)にて洗浄し、口腔内の細菌数を減らしていきます。

POIC(タンパク分解型除菌水)

③物理的要素
歯科衛生士さんによる口腔内への手技、歯ブラシによって細菌をお口の外に放り出す。

この3つの要素ががっちりスクラムを組んでいる状態を「増殖できない環境」だと考えています。

歯周病と口臭の関係について

歯周病や虫歯が原因で、口臭を引き起こす場合があります。

また、口臭と一言で言っても、要因が違うため、4種類に分類して解説してみます。

1 生理的口臭
起床直後や空腹時など、口の中の細菌が増殖して発生する口臭です。生理的口臭は健康な人でも発生する口臭で、歯みがきや食事をすることにより減少します。

2 飲食物による口臭
ニンニク、ネギなどのニオイのある食品、酒、タバコなどによる口臭で、多くは時間の経過とともに弱まります。

3 心理的口臭
口臭検査でも口臭が認められず、本人だけが口臭があると思い込む口臭。自臭症とも言われます。

4 病的な口臭
歯周病、進行した虫歯など、口の中の病気が原因で発生する口由来の口臭と、糖尿病や肝臓病など、体の病気が原因で発生する全身由来の口臭があります。

口臭に関しては、別途記事を作成し、治療法も含め解説する記載する予定です。

歯周病って治せるの?歯周病の治し方を知りたい!

歯周病の治し方について、様々な方法がネットで記載されていると思います。そこで、今回はよく疑問に思われる点に沿って、解説していきます。

歯周病は歯みがきで治せるの?

結論として、歯磨きで完治させることはできません!

しかしながら、口腔内の改善のスピードを上げることは可能です。

例えば、タンパク分解型除菌水(POIC)やマグネシウムペーストの利用やロイテリ菌の摂取などがあります。

また、歯みがきをする際の「ハミガキ剤」がありますが、多くのハミガキ剤は発泡剤や研磨剤が含まれているため、使用する際には注意が必要です。

歯みがき剤の成分表示をよく見て、歯周病の原因菌を効果的に殺菌する薬用成分が配合されたハミガキ剤をチョイスしましょう。

重点的に磨いた方が良い箇所とは?

また、歯周病菌の生息場所は、歯周ポケット内の歯垢(プラーク)のため、ここをきちんと除去しましょう。

歯周病の中でも初期で、炎症が歯肉/歯ぐきに限られている歯肉炎の状態なら、歯垢(プラーク)を取り除くセルフケアで、元の健康な状態に戻すことができます。

毛先みがき」というものもあります。

これまで歯の表面だけみがけばいいと意識していた人も、歯と歯ぐきの境目にハブラシを当て、きちんと毛先が当たっているか意識して、歯を磨くようにしてみましょう。

但し、この磨き方を習得したからと言って、歯周病が完治の方向に向かう訳ではありません

何故なら、人によって、歯の並び方、お口の汚れ方、磨き方、指導内容が異なるからです。

そのため、歯周病をしっかりと完治の方向に向かわせたい方は、歯科衛生士に指導を受けながら、覚えることをお勧めします。

自宅で歯周病を治せる?

結論「自宅だけのケアでは難しい」です。

何故なら、歯周病は、歯石や歯垢を取り除くことが大切なのですが、取り除くためには、専用の器具で治療しなければいけないからです。

歯茎にこびりついた歯石をとるのは、自分一人では取れないですよね(汗)

そのため、歯周病をしっかりとケアしたいなら、歯科医院に通って頂く必要があります。

自宅で歯周病の予防はできるのか?

自宅で自分一人で歯周病を治すことはできませんが、歯周病にならないための予防であれば、自分一人でもできます

大まかにお伝えすると、「歯石や歯垢をできる限り溜めないようにすれば良い」ので、上記でお伝えした「毛先みがき」やフロスなどのデンタルグッズを使用して、口腔内の状態を良くしてみてください。

他にも、生活習慣を整えたり、食生活として砂糖類を摂り過ぎないようにする等も重要なことです。

歯周病の症状が手遅れにならないために

歯周病は、自然に治るものではありません。

むしろ、放置をしてしまうことで、歯がぐらぐらになってしまい、歯が抜けてしまう等、悪化する可能性が高くなってしまいます。

勿論、抜けたとしても、入れ歯やインプラントを実施すれば、見た目や噛む機能を回復させることができますが、やはり元々備わっていた天然の歯には叶いません。

いつまでも長く、美味しくご飯を食べるためにも、日頃からの歯みがきは勿論のこと、「歯周病かもしれないな」と少しでも違和感を感じた場合は、歯科に受診されることを強くオススメします。

早期に発見し、早期に治療するが、あなたの負担が一番少ないはずですよ。

歯周病に効く有効な処方薬とは

歯周病に良いと言われる代表的なお薬は「ジスロマック」です。

ジスロマックとは「菌を退治するお薬」です。菌のたんぱく質の合成を阻害することで、菌を退治していきます。

ジスロマックの特徴は、「効果の持続時間」です。

通常の抗生物質の場合、毎日飲み続ける必要がありますが、ジスロマックの場合、1度飲んでしまえば、7~10日間ほど、効果が続くと言われていますので、何度も頻繁に飲む必要がありません。

注意が必要!ジスロマックの服用方法について

中には胃腸が弱く、抗生物質によって下痢などの症状が出やすい方もいらっしゃるかと思います。

その場合は、3日前後に分けて服用する方法もあります。

当院の場合、位相差(いそうさ)顕微鏡でお口の中の状態を確認した上で、ジスロマックを使用するか否かを決めますので、全員の方に対して服用をオススメする訳ではありません。

もし服用される場合は、方法も含めてしっかりとお伝えしております。

歯周病を根本的に治療したいなら

抜本的に歯周病を治療したい方は、「トータルヘルスプログラム(THP)」を受診されることをオススメします。

「トータルヘルスプログラム(THP)? なにそれ?」と思われた方が多いかもしれませんが、一言で表すと、「短期集中で歯周病の根本的治療ができるプログラム」です。

東海地区では、当院含め3院しか専門で実施できるところがありません

歯周病の治療をする際、「歯が痛いのかなぁ?」と不安になる方もいらっしゃるかもしれませんが、その点ではご安心ください。

何故なら、トータルヘルスプログラム(THP)の特徴として、「ほとんど痛みを伴わず、精神的・肉体的に負担が少ない優しい治療」だからです。

歯周病の治療期間・回数・費用について

THPの治療期間は、短期集中で治療を実施します。

約2~3カ月前後の間に、6回~11回前後と、短期的に実施をし、歯茎の状態を一気に良くしていきます。

自費診療になりますが、費用は内容につきましては、こちらをご覧ください

まとめ

いかがでしたか? 今回は歯周病に関して、まとめてみました。

上記でもお伝えしましたが、歯周病は「自覚症状がなく進んでいく病気」です。

歯の出血や違和感を感じたとしても、「大したことはない、すぐに治っていくだろう」と思ってしまう気持ちは分からなくもありません。しかし、気付いた時にはかなり歯周病の進行が進んでいるケースも経験上多いのも事実です。

口腔内に少しでも違和感を感じたら、当院に連絡して頂くのは勿論のこと、仮に違和感を感じなかったとしても、口腔内の状況を整えておくことは、80歳を超えても美味しい食事をし続けるために重要なことなので、3カ月~4カ月に1回は定期的に歯科医院に通われることを強くオススメします。

この記事を書いた人

1986年 東北歯科大学卒業。1986年 滋賀医科大学 口腔外科 勤務。1987年 磯村歯科医院 勤務。1992年 先代より磯村歯科医院の院長職を引き継ぐ

日本糖尿病協会歯科医師登録医、一宮市市民病院地域連携登録医、口腔管理医療連携医

目次
閉じる